News

河岡義裕機構長が令和5年度「文化功労者」に選ばれました!

河岡義裕先生は、ウイルス研究の第一人者として、インフルエンザウイルスの基礎研究ならびに応用研究を通じて、数々の新発見を行うとともに、予防や治療の発展に寄与する知見を集積することにより、世界のインフルエンザ対策に寄与するなど、ウイルス学の発展に多大な貢献をされてきました。

世界に先駆けて、プラスミドからインフルエンザウイルスを人工合成する遺伝子操作系(リバース・ジェネティクス)を開発し、この技術を用いて病原性が強い鳥インフルエンザウイルスに対して、人工的に塩基配列を変え弱毒化する事に成功しています。同法を用いて作成された弱毒化ウイルスはワクチン株として有効性が示され、パンデミックに備えて世界各国で備蓄されています。

また、1918-1920年に全世界的に大流行したスペイン風邪を起こしたインフルエンザウイルスを人工的に再構築し、サイトカインストーム(炎症物質の暴走による過剰な免疫反応)を誘導することで宿主を死に至らしめることを示し、人類史上最も死者を出したパンデミックのひとつの原因を明らかにされました。

さらに最近では、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)に対して、同様の実験手法を用いることによって、様々なウイルス変異株の病原性と薬剤への反応性の評価、感染モデル動物の開発など、パンデミック制圧に向けて幅広く貢献されています。

医学ならびに獣医学の発展に尽くされてきた、その功績が高く評価されたこと、心からお喜び申し上げます。


現在、河岡先生は、ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点群においてフラッグシップ拠点の役割を担う東京大学国際高等研究所新世代感染症センター(UTOPIA)の機構長として日本におけるワクチン開発の迅速化に日々尽力されています。

 

センター一同、先生の益々のご活躍を祈念させていただきます。


新世代感染症センター 事務部門長 井上純一郎

論文

インフルエンザウイルスのリバースジェネティクス
Generation of influenza A viruses entirely from cloned cDNAs.
Neumann G, Watanabe T, Ito H, Watanabe S, Goto H, Gao P, Hughes M, Perez DR, Donis R, Hoffmann E, Hobom G, Kawaoka Y
Proc Natl Acad Sci U S A. (1999) 96 (16): 9345-9350 https://doi.org/10.1073/pnas.96.16.9345

スペイン風邪を起こしたインフルエンザウイルス
Aberrant innate immune response in lethal infection of macaques with the 1918 influenza virus
Kobasa D, Jones SM, Shinya K, Kash JC, Copps J, Ebihara H, Hatta Y, Kim JH, Halfmann P, Hatta M, Feldmann F, Alimonti JB, Fernando L, Li Y, Katze MG, Feldmann H, Kawaoka Y

Nature. (2007) 445:319-323 https://doi.org/10.1038/nature05495 

11月6日に行われた顕彰式にて
(左:北大路欣也さん 右:河岡義裕先生)

河岡君


文化功労者に選定されたこと おめでとう。

貴君の並々ならぬご努力の成果が日本でも認められたことを嬉しく思います。

これからも研鑽を深めて貴君の世界を創造されますことを頑固オヤジとして祈念し、見守ります。


喜田 宏


北海道大学 ユニバーシティプロフェッサー

人獣共通感染症 国際共同研究所 特別招へい教授 統括

北海道大学ワクチン研究開発拠点 特任教授

Director of WHO Collaborating Centre for Zoonoses Control

Member of WHO IHR Committee

河岡先生、この度は文化功労者のご選出、誠におめでとうございます!

 

ご縁があり長年に渡りお世話になっております。2005年に、当時河岡先生がセンター長を務められていた医科学研究所(医科研) 感染症国際研究センターに、私を主任研究者(PI)として招聘していただいたことが、長年のお付き合いの始まりだったかと記憶しています。

 

私が医科研に赴任した当初は、30歳代だった私に多大なメンターシップを供与していただきました。また、私が医科研の教授に就任後も、感染症国際研究センターや中国における海外拠点を共に運営する機会や、感染症連携研究機構や新世代感染症センターを共に立ち上げる機会に恵まれ、さらには、研究室が同じフロアの隣であったこともあり、河岡先生からは多くのことを学ぶことができました。

 

「バットは振らなきゃ当たらない」「ホームランを狙わなきゃヒットもでない」は、印象深い河岡先生のつぶやきで、今でも私の研究や人生の指針となっています。いつも「面白いサイエンス」を探求され、その研究のアウトプットを「然るべき場できっちりと発表なさる」その研究姿勢は、全ての研究者が目指していることかと思いますが、なかなか同じようにはいきません。研究への好奇心やその推進力、考え方、組織のマネージメント力、周りの人々への細かい配慮等、また、まだ私が気づいていない秘訣を、今後も学ばせていただければ幸いです。

 

河岡先生は雲の上の方で近づきがたいと思われがちですが、実はとても気さくな方です。好奇心旺盛で、芸能ネタにも詳しく、普段の会話や会食時など、研究以外の話題でも盛り上がります。会食時に会話が盛り上がり、「河岡先生はこんな気さくな方なんだ」と驚いている方を幾度か見かけています。また、私が医科研に赴任した頃のことで随分昔の話になりますが、河岡先生が情熱大陸に出演なされた際、番組最後の河岡先生の発言で「偉い先生も〇〇〇するんですよ」とおっしゃっていたのは鮮烈な記憶として残っています。

 

現在、医科研、ウィスコンシン大学、国際医療研究センターでの研究に加え、新設の新世代感染症センターの機構長に就任なされ、その立ち上げや発展にご尽力されているかと思います。今後も、お体を大事にしていただき、世界トップレベルのサイエンスの推進や新世代感染症センターの舵取りにおいて、益々のご活躍を心より祈念しております。私も医科研の副所長、新世代感染症センターの副機構長として河岡先生と共に、両部局の発展に微力ではありますが尽力していきたいと思っております。

 

この度は、ご選出おめでとうございます。


川口 寧

 

東京大学 医科学研究所 副所長

同   国際高等研究所 新世代感染症センター 副機構長

アジア各国の研究者を感染症国際研究センターに招いたトーレーニングコースで(2006年5月)


河岡義裕先生

この度は、栄えある文化功労者へのご選出、誠におめでとうございます。

ウイルス研究における、河岡先生の長年のご功績の賜物とお喜び申し上げます。

私が「ウイルス研究って面白い!」と初めて実感したのは、河岡先生のウイスコンシン大学の研究室で、インフルエンザウイルスの人工合成系が確立された瞬間に立ち会ったときです。河岡先生が、ウイルスが感染した細胞を顕微鏡で観察しながら、「これ!ウイルスが増えてるよー!!」と興奮している姿が今でも目に焼き付いています。魔法の杖を手にしたような気分で、河岡先生と「あんなウイルスやこんなウイルスを創ることができるね。」と話し合ったことは、今となっては、とても良い思い出です。また、エボラ出血熱の流行が発生した西アフリカ・シエラレネオ共和国へ、河岡先生と赴き、研究や啓蒙活動を行ったことも、昨日のことのように印象深く覚えています。

河岡先生からは、研究面に限らず、様々なことを教えていただきました。「“やりたい”という強い意志と情熱があれば、大抵のことは成し遂げることができる」ということも、河岡先生の背中を見て、学びました。ご自身のモットーである「Save the world!」を掲げて、挑戦し続ける河岡先生を、これからも追いかけていきたいです!

河岡先生のより一層のご活躍を心よりお祈り申し上げます。

渡辺 登喜子 

大阪大学 微生物病研究所
分子ウイルス分野 教授

河岡先生、文化功労者へのご選出おめでとうございます!

私は、ポスドクから32年の 腐れ 縁でいろいろアレなのですが、UTOPIAへの同舟、光栄に存じます。

目指すはA.R.E.ですね(神戸人ながら隠れ巨人ファンと言ってたような….)。

それにしても、眉目のホメオスタシスは不思議です。

 今後とも、ご指導いただければ幸甚です。

堀本 泰介 

東京大学 大学院農学生命科学研究科
獣医学専攻 獣医微生物学教室   教授

1990年国際ウイルス学会@ベルリン

矮小乱雑な研究室とBSL3実験室入口、聖ジュード小児研究病院@メンフィス:高病原性ウイルスとの闘いはここから始まった

師Webster博士夫妻と@メンフィス、左隣はご子息、右列は北大獣医輩 

「医科研総合研究棟3階の北側」というのは、私にとって、やすやすと足を踏み入れることができない崇高な場所でした。

2017年、医科研感染症国際研究センターの独立准教授としてお声がけいただいた後に、初めて先生の教授室に足を踏み入れた時のこと。そして2018年、着任してすぐにチョンボして、やはり先生の教授室に呼び出され、河岡先生と川口先生に囲まれてご指導いただいた時のこと。今でも昨日のことのように覚えています。

そんな、河岡先生が20年以上使用された崇高な場所を、これから私が使用させていただくことを、心から光栄に思っています。

私自身、私のラボ、G2P-Japan、そして、日本の感染症研究が、これから世界に挑んでいく航海の灯台として、私たちの研究を照らし、その道標となってください。

この度は誠におめでとうございます。これからも変わらずのご指導のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

佐藤 佳

東京大学 医科学研究所
システムウイルス学分野 教授

河岡先生、この度は文化功労者へのご選出、誠におめでとうございます。

僕が大学院生として河岡研に入った時、河岡先生は確か40代半ばだったと思いますが、いつの間にかその時の河岡先生の年齢を超えてしまいました。自分が当時の河岡先生と同じくらいの年齢になって自分自身を少し振り返ってみると、改めて、河岡先生の研究者としての凄さ、成し遂げてきたことの大きさ、感性の鋭さ、ビジョンの明確さに敬服します。

数年前、河岡先生とお寿司屋さんに向かうタクシーの中で、野村克也監督の本をよく読んでいると伺った記憶があります。金を残すは三流、名を残すは二流、人を残すは一流という野村監督の有名な言葉がありますが、河岡研で学んだ学生やスタッフは、今や何名も教授になっていて(さらには准教授や助教もたくさん!)、それこそが河岡先生が研究者としてだけでなく人として一流たる所以だと思っています。僕は学生としてそしてスタッフとして、河岡先生がされてきたことを間近でずっと見てきましたが、その経験は僕にとっては大きな財産になっていて、その財産を今のラボのメンバーたちに伝え残すことも今の僕の仕事だと思っています。今後、河岡先生の孫弟子にあたるラボのメンバーたちと共に、河岡先生におもしろいと思ってもらえるような研究成果をたくさん出したいと思います。

現在はなかなか機会がないですが、今後また何かのプロジェクトで共同研究できたら嬉しく思います。今後も益々のご活躍を祈念しております。

野田 岳志

京都大学 医生物学研究所
微細構造ウイルス学分野 教授 

(&准教授・杉田征彦、助教・村本裕紀子、助教・中野雅博)

河岡先生、文化功労者へのご選出、おめでとうございます。

 

私が学部6年生の時に初めて河岡先生のラボを見学し、先生にお会いした第一声が、“目赤いよ、大丈夫?”だったことは、今でも忘れておりません。当時は慣れない東京で不安しかなかったと記憶しております。あれから20年経ちましたが、その内16年間を河岡ラボで過ごしてきました。当時から世界的なインフルエンザウイルス研究者として有名でしたが、時と共にウイルス学の枠を超えて活躍する姿を間近で見ることが出来たことは、掛け替えの無い経験だったと思います。特にCOVID-19によるパンデミックでは、いち早く研究を開始し、日夜問わず最新の情報を収集し、ラボメンバーに還元するエネルギッシュな姿を見ると、“生粋の研究者だなぁ”と畏敬の念を抱かざるを得ません。Chat GPTなどの新しいものにも関心を持ち、すぐに使ってみるところに、河岡先生の若さの秘訣があるのではないかと感じます。

 

今後もUTOPIA、医科研、国立医療研究センターでの研究を発展させ、次のパンデミックに向けたワクチン開発にも、微力ながらも貢献させていただきたいと存じます。引き続き、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

 

山吉誠也

 

国立国際医療研究センター研究所

国際ウイルス感染症研究センター 部長

河岡先生

文化功労者への選出、謹んでお慶び申し上げます。

これまでの先生の素晴らしい研究業績や社会貢献については、同じ医科研の教授であった頃から尊敬の念に堪えません。特に感染症研究を通して、世界中の人々を助けたいという並々ならぬ信念を維持し続けている点は、誰でもできることではなく、まさに稀有な方と言わざるを得ません。そんな先生にUTOPIAの事務部門長のオファーをいただき大変光栄に思い大きな責任も感じております。本事業がなんとか次世代に幸せな世界をもたらすように共に歩んでいければ幸いです。

井上純一郎

東京大学 国際高等研究所 新世代感染症センター(UTOPIA)
事務部門長    特任教授 

河岡先生を囲んで、井上先生、川口先生、石井先生と河岡ラボの皆さんと一緒にケーキでお祝いしました。

7 November 2023